深度 、急速潜行~
[Life as a Half Drow]TOKYO UNDERGROUND
▼わたしは地下が好きだ。
 ということはまぁ、一緒に TRPG を遊ぶ連中にはわかってることだろうと思う。
 この嗜好がわたしの中に育ったのは、たぶん、中学生ごろのいくつかの経験が重なった結果だと思う。たとえば、この頃、わたしは東京の板橋区に住んでいて、最寄り駅が都営三田線の駅だったことから、電車でどこかに移動するときはいつもまず地下鉄に乗っていた。この頃、わたしはウィザードリィに出会った。この頃、わたしは TRPG に出会ったのだが、これがクラシック DnD で、基本的には地下にもぐるゲームだった。ラヴクラフトを知ったのもこの頃で、わたしは「無名都市」に惚れ込んだ。
 ウィザードリィと DnD の影響は強いと思う。
 ドラクエで cRPG に出会ったわたしだが、ウィザードリィの「感触」はドラクエとはまるで違っていた。ウィザードリィには「リレミト」の呪文がなく、瞬間移動の呪文は存在するとはいえ座標を間違えば「石壁の中に移動してゲームオーバー」というシロモノだった。そういう事情もあって、そのダンジョンは無味乾燥な線画で表現されているにもかかわらず、その地下深くにもぐってゆくことは、頭上に巨大な空間と、それを構成している大質量の石の壁や床が厳然と存在していることを実感させられるものだったのだ。そもそもダンジョンの深さじたいがドラクエの比ではないのでもあるが。
 DnD に関しては、わたしは当時の地元のプレイグループ内で二番目に多く DM を引き受けたメンバーだった。このことは、わたしに大量の地下迷宮を創造する機会を与えた。そうして大量の地下迷宮を創造していると、そこで(頭上に大質量の岩や土砂が存在する場所で)生活するということについて考えずにはおれなかったのだ。(で、一時期わたしが作るダンジョンのマップには必ず「WC」の表記があったりした)
 その後、まぁ「いろいろあった」わけだが、数年前に、「久しぶりに地元で一発クトゥルフの短編*をやるか」と思い立ったことがある。その頃(今もだが)、わたしは現在大江戸線が走っている土地(12 号線が開通したら最寄り駅が 12 号線の駅になる土地)に住んでいて、毎日通勤通学の途中にその工事風景を見ていた。そうして、道路の真ん中にある「地下への入口」がいつも気になっていた。
 あそこから地下に入って、工事中の都営 12 号線の線路(になる場所)を歩いてみたら、どんな景色が見られるのだろう。
 それ以前に観て、「話としてはたいして面白くもないが、地下鉄を舞台にしたホラーとしての感触はイケてる」という感想を、映画「ミミック」に対して持ったことも影響していると思う。
 その興味から生まれたシナリオ案に、わたしはタイトルをつけた。
 「TOKYO UNDERGROUND」
 そして、ネットの海を泳いで東京の地下に関する情報を漁りはじめた。で、ある日、そのほぼ同じタイトルを持つマンガが存在することを知った。
「しまった、先を越されたか」
 ……というのがそのとき最初に感じたことだったというのはもう、我ながら阿呆だと思うのだが。
 とりあえずわたしはその本を買ってみて、そして大いに失望した。
 その作品じたいがつまらないものだったかどうかは何ともいえない。わたしは一巻しか買ってないので、その後面白くなった可能性は否定できないからだ。――つまり、一巻の段階では、少なくとも「面白い」と申し上げられるものではなかったわけだが、まぁそれはこのさい重要ではない。一巻からして相当に面白かったとしても、あの方向性ではわたしは失望するしかなかっただろうから。(地下住人が「風」のパワーにアクセスできず、地上出身の主人公がそれにアクセスし得たゆえに重要人物となってゆくという仕掛けは面白いと思った。そのあたりが掘り下げられてゆけば面白いものになりえただろうと思うが、読んでないし、読む予定もないので、これについては以上ということで)
 わたしは、そこが「東京の地下」であることを重要な要素としてもつシナリオを書こうと思っていたし、そういう作品を期待してその本を手に取ったのだが、この作品はせいぜい「東京」の「地下」であることをしか活かしていなかったし、活かそうとしているようにもとても見えなかったのである。
 失望は、わたしのシナリオ作成意欲にも影を落とした。このタイトルではもう作れない。が、他に、ふさわしいと思えるタイトルも思いつかなかった。
 で、このシナリオは結局作ることなく現在に至っている。
 とはいえ東京の地下、地下で生活すること、そこを舞台にしてフィクションを作ることに対する興味まで失ってしまったわけではない。
 その後も思い立つと少し調べてみたりしつつ、知識は少しずつ増えたりもしている。
 ネット上で参考になる優れたサイトとしては、とりあえずみっつを挙げておこう。そのいちそのにそのさん。いずれも sawadaspecial さまでちょっとした特集が組まれたときに知ったものである。
 その他、紙のメディアでは「モグラびと」という本が印象的な良書であった。この本は東京ではなくニューヨークの地下生活者を取材した本だが、「地下で生活すること」については多くの知見を得ることができた。
 そして、先日、新潮文庫から出た「帝都東京・隠された地下網の秘密」なる文庫を手にした。
 まだ半分ぐらいまでしか読んでいないが、これもかなり楽しい本である。
 なんだか陰謀説みたいなあやしげな話が続々登場する本だが、どうせ作ろうとしているのは「クトゥルフのシナリオ」なわけであり、このくらいうさんくさくていかがわしいほうがむしろ有難いともいえる。まぁ、政府が苦心惨憺して手を入れている地下空間に「モグラびと」がもぐり込んで生活してていいものかどうかは悩ましいが、そのくらいは TRPG のシナリオ用としてはアリだろう。
 というわけで、長々と書いてきたが、このエントリは要するにカテゴリ保守と本の紹介が本題である。
 前置きが終わったところで本文が終わりというのもひどい話だが、保守ということで見逃していただければ幸いである。
 現在、わたしは別の形で地下生活者の地下を舞台にしたシナリオを作っているが、こちらが難航している中で読書ばかりがはかどってしまうのは困ったものではあるのだが……。
 ……そのシナリオは DnD 3.5 版のシナリオで、アンダーダークを舞台にしたものになる予定なのだが……。

* クトゥルフの短編:TRPG「クトゥルフの呼び声」の短いキャンペーン程度の意。3 回~ 4 回のセッションで構成するつもりだった。
2006/02/02 (Thu)
060131 * Top * 060203
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