深度 、急速潜行~
[Life as a Half Drow]初心者経験の欠落
▼最近、VNI 様のおかげなどもありまして、広い範囲で TRPG 関連記事を読む機会が増えたわけですが、読んでて最近思うようになったことをひとつ。
 どうやらわたしは「TRPG の初心者だったという経験がない」ようです。
 いや、まて。落ち着け。違う、違うんだグリーンヒル*1、「あァん? じゃあアレかい。お前は初めて TRPG を遊んだときからヴェテラン――という云い方はこれはこれで議論を生じそうだから、「少なくとも初心者ではない経験者」だったとでも云うのかい?」とか云うのはちょっとまて。
 ええと、云い換えよう。たしかに初めて TRPG を遊んだときには、わたしは TRPG の初心者でもあったのでしょう。しかしそれは、ひと山いくらで襲ってくるオークのたまたま今へち殺した個体がオークのどの家族の次男坊だったか三男坊だったか、というようなのと同じような、実感として無意味な特徴でした。
 第一にわたしは当時中学生でした。中学生であるということが、TRPG に関して初心者であるとかないとかいうことがどうでもよくなってしまうような強烈な特徴である――ひと山いくらのオーク集団の構成員であるという特徴がそうであるように――ということは、今、「問題あるプレイヤー」の呼称として「厨」という言葉が使われることからも明らかでしょう。
 第二に、わたしたちのプレイグループ*2 は、全員同じスタートライン、すなわち TRPG を完全に無経験の状態から TRPG をはじめました。わたしも実際初心者であったわけですが、まわりも同様に初心者であり、「初心者であるという特徴が集団の中で意味を持つことはなかった」のです。
 ロードス島戦記の第二部リプレイがコンプティーク誌上で連載されていた時代でした。TRPG という言葉はまだ存在せず、「あーん? お前が云ってるそれはコンピュータ RPG だろ? RPG ってのは本来はなぁ云々」 OK。当時のオレは何か舶来の高度っぽいモノを遊んでるってことが根拠もなく自慢たらしい言葉になっちゃうような中学生だったってことだよ。
 われわれのプレイは手探りでした。TRPG という言葉が必要なかった理由のひとつは、当時われわれにとって TRPG は(後にクラシックと呼ばれる)DnD しか存在せず、「TRPG を遊ぼうぜ」じゃなく「DnD 遊ぼうぜ」で済んでしまったから、というものでもあるんですが、つまりわれわれには DnD しかなく、その DnD についてもルールブックはプレイグループに赤箱ひとつに青箱ひとつ(わたしが所有してた唯一のクラシックのルールブック)しかなく、その DnD をどうやって遊ぶかの指針になるような副読本はロードス島のリプレイと「D&D がよくわかる本」ぐらいしかなかった時代。もう少し時代が下がるとコンプティークの付録で DnD の入門ブックレットが手に入ったかなぁというぐらいの時代。
 いやあ。
 楽しかった。が、ひどいプレイばっかりやってましたとも。
 われわれは全員が初心者であり、そして初心者である以前に中学生でした。
 一例を挙げます。今もって当時の仲間との間では「宿屋経営シナリオ」として語り草になってるプレイです。
 たぶんロードス島 II の最初のシーン*3 に影響されたんだったと思いますが、まだ仲間になっていない PC たちが酒場にたむろっていると、ゴロツキが酔って暴れはじめます。これを PC たちなどが立ち上がって鎮圧するわけですが、この暴れ始めたゴロツキも武装しており、われわれ PC も武装していました。勢い余ったわれわれはゴロツキだけでなく店員やら店主やら無関係の客やらもブッ殺してしまい、宿には自警団の兵士たちが押しかけます。PC たちは宿屋の入口で各個撃破したりしつつ呪文も駆使したりして結局これを撃退してしまい、村には戦闘能力のある NPC がいなくなってしまい、数少ない一般人が途方にくれているという状態が出現。「おい、どーすんだよ」「しょうがねぇ、一般人を雇ってオレらが宿屋を経営しよう」
 今やったらどうなるかって?
 っていうか、今そんなコトそもそも誰がやろうだなんて思うもんですか!
 でも、当時のわれわれは初心者で中学生でした。マスターも初心者で中学生でした。みんなマジメに悩んださ。「一般人の能力はこれ、傭兵として挙げられてる兵士の能力はこれ、ってことは、普通に戦ったらエキスパートレベルのパーティーはあっさり村のひとつやふたつやみっつやよっつ、へち潰してしまえるんじゃないのか?」
 だが、それじゃマズい。マズいってことには、そりゃ、われわれにもわかってましたし、続けているうちに「こりゃいよいよこのままじゃマジィぞ?」ってことには気づきはじめるわけです。
 途中経過ははぶきます(というか、それほど多くの特徴的なエピソードを覚えているわけじゃないので書き出せないってのもありますが)が、その後のわれわれのプレイは徐々に軌道修正され、常識的と思われる範疇に近づいてゆきました。しかし、その原点には「宿屋経営シナリオ」が存在し、あの無法世界(おい、あのとき PC にはローフルのアライメントを持ってるキャラだっていたはずだぜ?)から常識的な範囲のプレイに至るまでには、初心者中学生同士の遠慮も容赦も手加減も空気の読み方も知らない猛烈なエゴのせめぎあいがあり、その経験の上にわたしは「経験者」に成長していったのです。
 時代は変わりました。
 今や、TRPG をはじめる人々は、その多くが「初心者ではない集団に初心者として参加する」ことからはじめる時代です。そうでなくても(もちろんそうであっても)本屋……は厳しいにしてもゲームショップに行けば多くのルール、多くのプレイスタイルに応じたプレイの手引きやリプレイなどの副読本が売られており、中学生の財布でもそれなりに購入して読める時代です。その多様性の中からこのルールは面白そう、このルールは難しそう、このルールは……なにこれ? こういうリプレイみたいなスタイルはオレらの仲間内で合いそうだな、こういうスタイルはちょっと難しそうだな、このスタイルは……か、痒い!! と見比べながら自分のプレイに還元してゆくことが容易な時代です。
 なんというか、隔世の感というのはこういうときに使う言葉なのかなぁ、と。
 そしてどうやら自分が「初心者視点」というやつを「持ち得ない」らしいというのはもしかしたら深刻な問題なんじゃろうか……とか思ってみたり。
 むしろ中学生的な暴れ方をしてくれる初心者なんてものと遭遇したら、うまく対処できるのかもしれないけどなぁ?

*1 違う、違うんだグリーンヒル:銀河英雄伝説第二巻より、アーサー・リンチ少将の名セリフ。劇中での使われ方とココでのパクり具合に直接の関連性はない。
*2 プレイグループ:現在メインで遊んでるプレイグループとは異なる。要するにふだんからツルんでた中学生男子の集団であり、昼休みは一緒にサッカーを遊び、放課後は TRPG をやったり麻雀を打ったり三国志 II のマルチプレイを遊んだりしていた。
*3 ロードス島戦記 II の冒頭:まだ知り合う前の PC たちと NPC クレリックがたむろしてる酒場で揉め事がおこり、PC たちは成り行き上協力してこれを鎮圧する。この手並みを伝え聞いた冒険者ギルドのスレインが……とかそんな展開だった、と思う。
2005/09/27 (Tue)
050926 * Top * 050929
■ Comment
・コメントを投稿する
URL
Comment
Pass
 
■ Trackback
この記事のトラックバックURL
・この記事へのトラックバック
はてなブックマークで、一言感想を書いた記事へのトラックバックを集約している記事です。本当に端的なコメントです。 一言感想は、こちら   http://b.hatena.ne.jp/gensouyugi/%e9%9b%91%e6%84%9f/
* Top *