深度 、急速潜行~
[日々のいとまに]090319 ~涼宮ハルヒの暴走~
▼あー。なんとも評しづらい一品でございました。
 つーかですね。面白いです。もしかしたらここまでのシリーズで一番だったかも。しかし、あるいはゆえに、何やら何とも云い難いナニカも同時に感じたわけでして。
 うまく云えんのだが、なんとなく書いてみます。
 と、その曰く云い難い部分に踏み込む前にシンプルな感想。今巻は全力で長門ですか。前巻はまぁ長門っちゃ長門だったんですが、大半において「長門じゃない長門」だったわけで、「長門である長門」にフォーカスしたという意味では革命的であったと申せましょう。ってまぁ、このシリーズ読んで素直に読者の視点から見たら長門一択だとは思うんだよねー。実際にキョンの立場だったら(強く感情移入したら、と普通なら云えばいいところなんですが、「自分がキョンの立場だったら」でなく「キョンに感情移入したら」だと、キョンがかなり引いた(読者的な)視点を持ってるために、このシリーズの場合はそうも云えないのがややこしい感触)ハルヒかみくるのほうが株価高いんじゃないかなぁとも思いますが、読者視点(メタって云っていいのかな?)からすりゃ誰だって一択な気が
 で、三本ともまさにそうだったわけですが(ってか二本目はあれは銀英伝 II あたりのテイストか? リアルタイムな点が現代風だけど)三本目だ。
 とりあえず、回想冒頭の鍋シーンの幸せさがすさまじいです。何ら具体的な味の描写がないにもかかわらず、ものすごく美味そう。たぶん、取り分けたり奪い合ったりしてる描写の挟み方が効いてるんかなぁと思いますが。
 しかしだ。
 以下は曰く云い難い部分。
 このあたりの幸せさなどにおいて、鶴屋さんが果たす役割は巨大でありました。しかし、どうも、ムリしてる感じが同時にしてしまってな。
 作者が。
 なんか、慣れないことしてるんじゃね、こいつ? というような。
 このあたりは説明し難いです。ちょっとぶっ飛んだ口調のキャラぐらい、いまどきの小説書きならまぁ誰だってこなすでしょうし、決してその中で鶴屋さんの描写が劣っているとは思わないんですが、なんつーか、「この作者、こういうモノを書きたいわけではないんじゃないだろうか」みたいなコトがちょっと頭をかすめてしまってな。
 とりあえず一読して、うはー、今巻はシリーズで一番かも! ところでこの違和感が気になるのでもっかい読むか、と、読み返して(まぁ、斜め気味にですが)みて、違和感は強まる一方で。
 何なんだろう。
 すげぇ、パワーをセーブしてこれ書いてる? というか、全開してないんじゃないか、この人、というような表層スライディング感が。といって、「上滑ってる」という表現をしたくなるようなクォリティの瑕疵は一切感じないので、そこんとこが曰く云い難いのですが。
 オレの感性では、この作者の持ち味は、たとえば「暴走」では「動かないネズミのオモチャを見るような目つき*」といったような部分に光る(あるいは上述の鍋場面の「効いてる」感のような)地の文のパワーにあるように思います。前者はテクスチャ的な技前であり、後者はもうちょっと体幹部から来てるような感じ。まぁ、このへん、あんまちゃんと分析的な気分で読んでるわけじゃないので適当ですが。(分析的な気分で読んだとしてもどれだけちゃんと云える技量がオレにあるかも非常に疑問ですが、そもそも、その意図もないということです)
 で、なんかすげぇリミッタかかってる感があるんだよなぁ。思い返してみると、べつに、「暴走」の三本目に限った話じゃないなぁ、という感じがしてくるんですが。
 なんか、全然吐き出されてない感じがする。
 んですが、そこを全開しちゃったら、たぶん、ハルヒ級の人気は出ないだろうなぁという感じもする。抑えて抑えて広く受け入れられるラインを維持してるっつーか。
 それとも、きちんと人気を積み上げた上で、シリーズ後半で全開されてたり、あるいは今後されるとか、そういう何かが残ってるんだろうか。
 と、その「まだまだこれ氷山のてっぺんだけっしょ?」という根拠のない印象を、強い核心をともなう形で持てるのであればそれはそれで曰く云い切ってしまっていいようにも思うのですが、それとも、もしかしたら、実はリミッタの外側にも別に何も(あるいは、あんまり)ないのかもしれん、という印象もなくもないところがなんとも曰く云い難いところ。
 たとえば、三本目でのオイラー問題の使い方とかが、とても、ここまでだと、「ただの道具、味付け、フレイバー、テクスチャ、に過ぎない」ものに見えるわけですよ。すごく必然性がない。で、これ、その印象をひっくり返すことが予定されてるか、あるいは(オレが未読の既刊ですでに)なされているか、そのへんが、想像できない。未読の既刊についてはとりあえず置くとして、これ書いた時点で、この人踏み込む気あったのか、それともなかったのか、それを想像できない。「一見必然性がない、謎解きのための謎解きのような印象を与えておいて、実は必然性があったんだよ! な、なんだってー! とやるための伏線に違いない!」と、現時点で確信できない、なぁ、でも、常識的に考えれば、やる気マンマンでなければ出さないであろうブツなわけであり……ううううううむ。
 ま、素直に続き読めばいいだけなんですけど。
 このシリーズはあんまし急いで消費しちゃうともったいない気がするのでなぁ。
 曰く云い難いまま、今回はここまで、っつーことで。
 つーか、水面下の氷山が存在してるなら、是非ハヤカワに放り込むべきだと思うんですが。
 って、スニーカー以外という意味ではすでに「他の」著作あるのか。気が向いたら手ェ出してみるかなぁ?

* ところで、この一連の表現で検索かけたところ、なんかひっかかったんですが。ロシア恐るべし。というかいいのかこれ。
2009/03/19 (Thu)
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