深度 、急速潜行~
[日々のいとまに]090218 ~黒のトイフェル(上)~
▼「黒のトイフェル」上巻読了。
 作者はフランク・シェッツィング。すなわち「深海の Yrr」の人。
 なんじゃこりゃ! スゲェ! 狂ってる!
 いっちばん最初のところは若干とっつきにくさを感じもしましたが、ヤスパー先生登場あたりからはもう怒涛の演説ラッシュで、一気に飲まれて読了な勢いでありました。っつうか、考えてみりゃ Yrr もそうだったよな。前半半分ぐらいはひたっすら予備知識の説明に費やすみたいな勢い。これがまたむちゃくちゃ面白いんですわ。やはりシグル先生やらヤスパー先生やらといったキャラクターの語り口が素晴らしいのでしょう。ん? 「魅力的なキャラクターの口を借りて教養を叩き込むぜゴルァ」ってどっかで聞いたことのあるスタイルのような気が……? あれか? まだ読んでないんですが「狼と香辛料」って噂によるとそういう話? 気にはなってるんですが、やはり表紙的に若干の抵抗を感じないではなくてな……(って、まさか(TRPG ルールブック以外の)表紙問題に、こういう形で言及することになろうとは思わなんだぜ)
 まぁ語りだすと止まらない勢いのヤスパー先生の素晴らしさは、たぶん下巻でも炸裂すると思われますし、とりあえず置いといて。
 この舞台、すなわち 13 世紀ドイツ都市のディストピア具合がハンパねぇ。すげぇ。いやまぁディストピアは云いすぎ(その時代ならどこの土地でも物質的にはそうそう裕福ではないだろうし)でしょうが、物質的に豊かではない時代のキリスト教(およびその聖職組織とその構成員)の抑圧感ってものすごいなぁ。少なくとも一神教圏以外では、物質的な厳しさは同じでも、魂の自由はもう少しはあったんじゃまいか。しかし、その後物質的に世界を豊かにしてゆく原動力はこのキリスト教的な抑圧(によって育てられた果てしない欲望)にこそあったのではないかというふうにも感じるわけで、「人を鍛えるための独裁はよしとすべきだ」を全力で連想し、オレはようやくポセイダル陛下(20 年前だぞ)の足元にひっかかりつつある程度なのか、とかそんな感じに打ちのめされてみたり。たまらんな。てゆか、時代設定こそ違いますが、ピルグリム・イェーガーの抑圧的キリスト教会の描写もなかなか物凄かったなぁ、なんてなコトも思い出してみたり。
 さらに連想は TRPG における「(so called)中世ヨーロッパ」の描写*みたいなほうにも進みまして、「リアルな中世ヨーロッパがどうこうとかよく云われっけど、このキリスト教という楔の「不在」の影響って、魔法みたいなものの「存在」よりもよほど決定的に重要だよなぁ」というようないつも思うコトをまたまた思ってみたりもしたり。まぁそれは連想の遊びですが、そういうリアリズムを追及するのなら、ウォーハンマー的にいくよりも、クトゥルフ的にいくほうがオレは好みかもなぁ。キリスト教自体が正気度減るようなブツになりそうな気もしますが。
 怒涛の演説のみならず、地の文の臨場感というかヴィジュアルイメージ喚起効果も強力で、赤毛のスプリンターことヤコプ選手をはじめ、ヒロイン格のリヒモディスもヤスパーもマリアもウルクハートもイイ感じで目に浮かんでくるわけですが、ふと、こいつらどんくらいのトシなんじゃろ、という疑問が生じたりもしまして、うぬぬぬぬ、とまたまた本筋と関係ない異文化テイストを再認識してしまったりも。「自分の年齢なんぞ覚えてるヤツは少数派」みたいなことは明記されてるんですが、もしかしてヤコプ君、相当若い? とすっと、それとちゃんと(少なくともトシ的には)釣り合いそうな展開になってるリヒモディス嬢も実は相当若い? でも「五人子供がいる」とかハッタリかまして、それが余裕で通ってる感じでもありましたし、なんつーか、わからん。まぁ、わからんで当然ですし、時代が違えば年齢の数字を見てわかった気になってもしょうがないとは思いますが、日本人なら「数えでいくつ」という描写でもなんとなくわかった気になれるあたり、ぬぬぬぬ。
 話そのものはというと、えー、単なる殺人事件といってしまえばいってしまえるモノでありまして、本題は背景世界を描き出すことそれ自体であろうとかなり本気で思ってます(とくに上巻ではねー)ので、ま、言及はせずにおく方向性でひとつ。
 下巻も即突撃します。

* 連想で。禁酒パラディンの飲み物シリーズ、リンゴジュース編。黒のトイフェルの主役ヤコプ君は毎日リンゴばっか食ってるみたいです。べつに好きだからってわけじゃない模様。
2009/02/18 (Wed)
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