深度 、急速潜行~
▼「女郎蜘蛛~伊集院大介と幻の友禅」読了。
 いっやー、面白かったです。つーか、一冊あたりの満足度で云うならグインサーガとかの比じゃないと思うぜ。グインは(ナリス暴走時代を除けば)長い目で見た話としてはちゃんとずっと面白いんだけど、一冊あたりで評価となるとやっぱ厳しくてな……。
 しかしまぁ、推理がどうこうというよりも、繰り返される長ゼリとかで語られる魂の叫びとか、人間模様とか、そのあたりを楽しむ話という感じではありました。オレは昔っから栗本薫のミステリーの魅力はそういう部分だと思ってるので、それはまったくもって減点するべき部分ではないと思うのですが、以前はもちっとちゃんと推理どうこうの部分もあったような気が……? ということはまぁ、感じないわけでもなかったです。最初の殺人とか、じっさい秒で解けた感じ。ってまぁその時点で確信してたわけじゃないですが、最後のタネ明かしでは、ま、最初の数秒に読んだ通りの結論でした。なんともな。
 で、関係各位の魂の叫びは、作者の魂の叫び、でもあるんだろうけど、さまざまな角度からのそれを、さまざまなキャラクターに分担させてるのでそれぞれは純化されて、かつ、いずれもそれぞれの角度からの誠心誠意が感じられてたまらんものでした。とりあえず大黒天童の長ゼリあたりは本格的に泣けそうになった勢い。んーまぁ、オレなんか決して手を出そうとか思えない世界だけどなー。あとは、源さんの工房あたりでの照秋の語りなんかもしみじみしびれる味わいで素晴らしい。いやホント、源さんが殺されないでよかったよ。
 キャラの魅力ではやはり枝村先生でございましょう。っつーか、まぁ、云ってしまえば醜女なわけですが、栗本薫、こういうキャラ本気で上手いよなぁ。キャラとして萌えるとかでもないし、実際いたら惚れるかっつったらまーありえんけど、すばらしく魅力的。トンブ・ヌーレンブルクさまにも通じ……いや通じないか。他にはユラニア次女ネリイなんかも栗本薫のこのテのキャラを描き出す筆力が際立ってましたが、そんな系のキャラか。そして死亡フラグがあからさますぎて笑う。なんか「ぼくらの気持ち」にもこんな役回りがいたような?
 惜しむらくは、照秋、大黒、枝村あたりが魅力的すぎて、重要な友納比紗子の描写にさほど魅力が感じられなかったことでしょうか。まぁでも、個人的には、描写に熱が入ったところであんまり盛り上がるキャラだとも思わないので、問題なし。
 しかしまぁ、猫目石あたりとも通じる線として、なんつーか、「非常に強力で、使った場面での勝利は確定するぐらいだけれど、それだけで全行程を勝って逃げ切れるほどではない」的なカードを与えられて、それでいろいろ泥沼になってる連中の泥沼感を描くの好きですな、栗本薫。素晴らしいデキ。素晴らしい才能と過酷な環境の組み合わせがいちばん(物語のとりあえずのエンディングにおける)ハッピー(幸福と云い切れるかどうかはまぁ別として)な結果を招き(例:照秋、オクタヴィア、朝吹麻衣子)、素晴らしいわけではないがある程度(これはまぁ、かなり準一流から三流ぐらいまでさまざまにせよ)の才能と恵まれた環境の組み合わせは最悪の結果を招く(例:二代目、シルヴィア、朝吹日美子)みたいな原型ともいえましょうか。なお、素晴らしい才能と恵まれた環境はナリスを生むので極めて危険ですが。(いやまぁナリスもいろいろ不遇をかこった部分はあるのは重々承知だけどねー)
 あーうん、そうか、人間模様の描写は猫目石系であり、猫目石に及んでない、という感じではあるかも。とはいえ、そのぶん、語りたがるキャラの魅力が素晴らしいので、なんでもかんでも詰め込んで焦点がボケるようなことにならなかったという意味で、決して減点ではないです。
 満足。
 いや、趣味バカとしての大黒とか最高だよな実際。
2008/08/11 (Mon)
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