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日々のいとまに]130119 ~ゴースタイズ・ゲート「世界ノ壊シ方」事件~
▼中井拓志「ゴースタイズ・ゲート「世界の壊シ方」事件」読了。
いやー、まずは無事 2 冊目が出たことを寿ぎたく思います。
中井拓志作品としては初めて読む「続きもの」でして、「ああ、続きものであるなぁ」というような感想が、やっぱり、最初に来てみたり。うん、正しい「第 2 弾」なんじゃないでしょうか。ひとつひとつのエピソードそのものの面白さを云うなら、初弾が上かなぁ、という気もしないではない、というか、今巻収録の 2 篇はいずれも話としてはすげぇ直球で、帯の「目からウロコの謎解き」ってのはちょっとピンとこない……むしろ(謎と謎解きの部分については)素直なつくりだったよなぁ? という気分なわけです。帯のこの文言は「これぞ中井拓志ワールド」と続くわけで、まぁ、確かに、中井拓志読みなれた身からすっと、この謎解きは「いつもの中井拓志だよねー」的には納得ではあるわけですが。んが、じゃあ総点で初弾に劣るのかというとそんなことは全然ないわけで、どこがかというと、そこが「続きものの強み」だなぁ、と思う次第です。つまり! キャラ萌えが! 順調に萌え広がっている! と!
てゆか、BL っぽい風味で知られてるっぽい「バチカン奇跡調査官」シリーズの新作と同時刊行でこんな百合風味全開の逸品を叩きつけてくる 角川ホラーはやっぱ狙ってやってるんかのう……。
それっぽい火力そのものは、初弾の後半エピソードのクライマックスにはさすがに及ばないものの、そこもやっぱり、「この 1 冊で最大火力」に拘泥せず、「持続可能な火力」を狙っていける続きものの強みという感じで、じんわり来る感触もあり、実にいい塩梅でございました。
てかさー、考えてみりゃ、とっくに試みられててよかったことだよねぇ、中井拓志の続きもの、ってのは。福井晴敏がかなりの例外なさで「おっさんと少年(強化人間的な)の物語」ばっかり書いてるなぁ、ってのと同じぐらいの確信を持って、中井拓志は「ねーちゃんと少女(正気度ほぼ 0 な)の物語」ばっか書いてるよなぁ、と云えるんじゃないかと思うわけですよ。いやまぁ、そこまでの頻度じゃないかもですが、印象に残る人間関係軸として、あるよねぇ? つーても、毎度ここまで百合百合しいかというとそういうわけではなく、ねーちゃんのほうが普通に本筋ヒロインとして描写されてる感(って、ああいうのを「本筋ヒロイン」であると迷わず思えるのって、もしかしてオレだけ(ではないにせよ少数派)なんじゃろうか……という気もしないでもないですが)が強く、そのねーちゃんが「あの娘」と「あのオーベルシュタイン」とも通じる部分があるような「あの」で呼ぶ(個人の感想です)正気度なし少女がセットで登場してるだけ、ではあるんですが。今回のシリーズでは、そのねーちゃんを本筋ヒロインとして位置づけるための主役が別途存在してない(ねーちゃん自身が主役)ことが、そのへんの感触を強めているんじゃないかと思われます。で、続きものとしての持続性を得るための一手段なのかどうかはわかりませんが、その「ねーちゃん―正気度ゼロ少女」軸以外の人間関係を深めたり接近させたりということがなされていないことで、相対的に、その軸だけが深まってってるというか。
てな感じで、まず、キャラ萌え的な点でド満足の 1 冊でございました、というところで、いったん感想をシメたいと思います。ひとに薦めるかと云われたら、「
前巻から読め」つーことでひとつ。
以下、水面下にネタバレ感想を軽く。